夜勤が体に与える影響 – 知っておきたい夜勤の落とし穴

健康

近年、24時間営業のお店が増えたり、交代勤務制の職場も多くなったりと、夜勤をする機会が増えています。 夜勤は仕事内容によっては効率が上がったり、日中とは違う静けさの中で集中できたりとメリットもありますが、実は健康へのリスクも少なくありません。

今回の記事では、夜勤が体に与える悪影響について、研究結果をもとにより詳しく解説していきます。

1. 体内時計の乱れと睡眠障害

人間には、体内時計と呼ばれる「サーカディアンリズム」が備わっており、24時間周期で眠気や食欲などの生理機能を調節しています。 夜勤はこのサーカディアンリズムを乱してしまい、不眠症や過眠症などの睡眠障害を引き起こすことがわかっています(1-4)。

  • 不眠症:寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝早く目が覚めるなどの症状があり、慢性的な疲労感や倦怠感、集中力の低下、頭痛、イライラなどの原因となります。
  • 過眠症:日中に極度な眠気が襲ってくる症状で、居眠りや事故などのリスクを高めます。

特に不眠症は、不安感や抑うつ、疲労感につながり、仕事のパフォーマンス低下にも影響します(3)。

2. メタボリックシンドロームや心血管疾患のリスク上昇

夜勤は、肥満や血糖値・脂質代謝異常、高血圧などを併発するメタボリックシンドロームのリスクを高めることが報告されています(5,6)。

  • メタボリックシンドローム:これらの症状が複数重なることで発症する病気で、糖尿病や心血管疾患などのリスクを高めます。
  • 高血圧:脳卒中や心筋梗塞などの原因となる病気です。
  • 虚血性心疾患:心臓に十分な血液が供給されなくなる病気で、狭心症や心筋梗塞などを引き起こします。

これらのリスクは、不規則な生活習慣や睡眠不足が大きく関わっていると考えられています(1,5,6)。

3. 胃腸のトラブルにも要注意!

夜勤では、どうしても食事時間が不規則になりがちです。それに加え、ストレスも溜まりやすい環境のため、胃炎や十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群などの胃腸のトラブルを引き起こしやすくなります(1,7)。

  • 胃炎:胃の粘膜が炎症を起こす病気で、胃痛、吐き気、嘔吐などの症状があります。
  • 十二指腸潰瘍:十二指腸の粘膜が潰瘍状態になる病気で、上腹部痛、みぞおちの痛み、吐血などの症状があります。
  • 過敏性腸症候群:腹痛、下痢、便秘、ガスなどが交互に起こる病気です。

規則正しい食生活を心がけるなど、胃腸のケアも怠らないようにしましょう

4. 心の健康にも影響が

夜勤は、慢性的な疲労や不安、さらにはうつ病などの精神疾患にも影響を及ぼします(1,3)。

  • うつ病:気分が落ち込み、何もやる気が起きない状態が2週間以上続く病気です。
  • 不安障害:理由もなく不安や心配が続く病気で、動悸、息切れ、めまいなどの症状が現れます。

また、日中活動している家族や友人との時間が取りづらくなり、人間関係の悪化にもつながるおそれがあります(1)。

5. 仕事のパフォーマンス低下と安全面の懸念

夜勤は、集中力の低下や作業ミスを誘発し、仕事のパフォーマンスを下げるおそれがあります(1)。

  • 集中力の低下:ミスや事故のリスクを高めます。
  • 作業ミス:重大な事故につながる可能性もあります。

特に、危険を伴う作業をしている場合は、安全面にも配慮が必要です

また、夜勤明けの帰宅時は眠気に襲われやすいため、事故のリスクにも注意しましょう

6. その他のリスク

  • がんのリスク上昇:近年、夜勤と乳がんや前立腺がんのリスク上昇との関連性が指摘されています。
  • 生殖機能への影響:夜勤が女性の場合は月経周期の乱れや不妊症のリスク、男性の場合は精子の質の低下などのリスクが指摘されています。
  • 免疫力の低下:睡眠不足やストレスの影響で、免疫力が低下し、風邪などの感染症にかかりやすくなる可能性があります。
  • 加齢速度の早まり:睡眠不足やストレスの影響で、老化の促進につながる可能性があります。

7. 年齢や持病との関連性

夜勤が健康に与える影響は、年齢や生活習慣によっても変わってきます。特に、若い年代よりも中高年層の方が悪影響を受けやすい傾向にあります。また、持病がある方は、夜勤によって病状が悪化することもあるので、あらかじめ医師に相談しておくことが大切です(8).

8. 夜勤の悪影響を軽減するための対策

夜勤の悪影響を軽減するためには、以下の対策が有効です。

  • 睡眠時間の確保:できる限り、7時間程度の睡眠時間を確保しましょう。
  • 規則正しい生活習慣:日中と夜勤の生活リズムをできるだけ近づけ、規則正しい生活習慣を心がけましょう。
  • バランスの良い食事:栄養バランスの良い食事を心がけ、特にビタミンB群やビタミンDを積極的に摂取しましょう。
  • 適度な運動:適度な運動は、ストレス解消や睡眠の質向上に効果があります。
  • ストレス解消:趣味や運動など、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
  • 休暇の有効活用:休暇はしっかりと休養し、疲れを溜めないようにしましょう。
  • 健康診断の定期的な受診:定期的に健康診断を受け、自分の健康状態を把握しましょう。

9. まとめ

夜勤は、便利さをもたらす一方で、睡眠障害や生活習慣病、精神疾患など、さまざまな健康リスクをはらんでいます。日々の過ごし方や食生活に気をつけたり、できる限りの睡眠時間を確保したりすることで、リスクを軽減することができます。また、職場環境の改善や、健康診断を定期的に受けるなど、予防にも努めましょう。

夜勤をする方は、ぜひ自分自身の健康状態に気を配りながら、無理のない働き方を心がけてください

参考文献

1. Costa G. The impact of shift and night work on health. Appl Ergon. 1996 Feb;27(1):9–16.

2. d’Ettorre G, Pellicani V. Preventing Shift Work Disorder in Shift Health-care Workers. Saf Health Work. 2020 Jun;11(2):244–7.

3. Vallières A, Azaiez A, Moreau V, LeBlanc M, Morin CM. Insomnia in shift work. Sleep Med. 2014 Dec;15(12):1440–8.

4. Bajraktarov S, Novotni A, Manusheva N, Nikovska DG, Miceva-Velickovska E, Zdraveska N, et al. Main effects of sleep disorders related to shift work-opportunities for preventive programs. EPMA J. 2011 Dec;2(4):365–70.

5. Pietroiusti A, Neri A, Somma G, Coppeta L, Iavicoli I, Bergamaschi A, et al. Incidence of metabolic syndrome among night-shift healthcare workers. Occup Environ Med. 2010 Jan;67(1):54–7.

6. Brum MCB, Filho FFD, Schnorr CC, Bottega GB, Rodrigues TC. Shift work and its association with metabolic disorders. Diabetol Metab Syndr. 2015 May 17;7(1):45.

7. Koller M. Occupational health services for shift and night workers. Appl Ergon. 1996 Feb;27(1):31–7.8. Ramin C, Devore EE, Wang W, Pierre-Paul J, Wegrzyn LR, Schernhammer ES. Night shift work at specific age ranges and chronic disease risk factors. Occup Environ Med. 2015 Feb;72(2):100–7.

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