室内植物は空気清浄機能を持つのか? – 科学的根拠に基づいて解説

健康

はじめに

近年、屋内空気の質 (Indoor Air Quality, IAQ) と健康への影響に対する関心が高まるにつれ、観葉植物の空気清浄機能の可能性が研究者たちの注目を集めています。様々な研究では、オゾン、二酸化炭素 (CO2)、揮発性有機化合物 (VOCs)、微粒子 (PM2.5) など、屋内の汚染物質を除去する観葉植物の有効性が検証されています。

観葉植物の持つ空気清浄機能

オゾン除去

観葉植物は、オゾンという有害なガスを除去する能力を持っています。オゾンは、コピー機やレーザープリンター、殺虫剤などから発生し、呼吸器系に悪影響を及ぼすことが知られています。

効果的な観葉植物:

  • サンセベリア (サンスベリア)
    サンセベリア (サンスベリア)の画像
    サンセベリア (サンスベリア)
  • シダアレカゲ (スパーダープラント)
  • ポトス (エバーフレッシュ)
    ポトス (エバーフレッシュ)の画像
    ポトス (エバーフレッシュ)

メカニズム:

観葉植物の葉には、気孔と呼ばれる小さな穴が開いています。これらの気孔を通して、オゾンが植物体内に入り、光合成の過程で分解されます。

研究:

スネークプランツ、スパイダープランツ、ゴールデンポトスなどの観葉植物は、制御された室内環境でオゾン濃度を低減することが示されている(1,2)

CO2と湿度

観葉植物は、光合成を行う過程でCO2を吸収し、酸素を放出します。CO2は、人間が呼吸によって排出する温室効果ガスであり、室内に蓄積すると、頭痛や疲労感などの症状を引き起こす可能性があります。また、観葉植物は、葉から水分を蒸発させることで、相対湿度を上昇させます。乾燥した空気は、皮膚や粘膜を乾燥させ、風邪などの感染症のリスクを高めます。

効果的な観葉植物:

  • ス帕ティフィラム・バリシイ (Spathiphyllum wallisii)
  • ヘデラ・ヘリックス (ヘデラ・ヘリックス)
    ヘデラ・ヘリックス (ヘデラ・ヘリックス)の画像
    ヘデラ・ヘリックス (ヘデラ・ヘリックス)

メカニズム:

観葉植物は、光合成を行う際に、CO2を空気から取り込み、葉緑体で糖分に変換します。この過程で、酸素が放出されます。また、葉から水分を蒸発させることで、相対湿度を上昇させます。

研究:

ある種の観葉植物はCO2を同化し、相対湿度を上昇させることができるが、その効果は光量や植物の種類によって異なる。Spathiphyllum wallisiiとHedera helixは、一般的な室内光条件下で特に効果的である(3)

ホルムアルデヒド除去

ホルムアルデヒドは、家具や建材、タバコの煙などに含まれる有害な化学物質です。ホルムアルデヒドは、発がん性や呼吸器系の炎症を引き起こすことが知られています。

効果的な観葉植物:

  • シダアレカゲ (スパーダープラント)
  • ポトス (エバーフレッシュ)
    ポトス (エバーフレッシュ)の画像
    ポトス (エバーフレッシュ)
  • ネフチリス (Aglaonema)

メカニズム:

観葉植物は、ホルムアルデヒドを根から吸収し、葉緑体で無害な物質に変換します。

研究:

クモ科の植物、ゴールデンポトス、ネフチティスは、室内の空気からホルムアルデヒドを除去する能力を実証しており、中でもクモ科の植物が最も効果的である(4–6)

揮発性有機化合物 (VOCs)除去

VOCsは、塗料、接着剤、洗剤などの家庭用品から発生する有害な化学物質です。VOCsは、頭痛、吐き気、めまいなどの症状を引き起こすことが知られています。

効果的な観葉植物:

  • シダアレカゲ (スパーダープラント)
  • ポトス (エバーフレッシュ)
    ポトス (エバーフレッシュ)の画像
    ポトス (エバーフレッシュ)
  • ドラセナ (ドラセナ)
    ドラセナ (ドラセナ)の画像
    ドラセナ (ドラセナ)

メカニズム:

観葉植物は、VOCsを根から吸収し、土壌中の微生物によって分解されます。土壌中の微生物は、VOCsを無害な物質に変換する能力を持っています。

研究:

観葉植物は、主に土壌微生物によって、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのVOCレベルを下げることができる。このことは、NASAの研究や他の研究でも裏付けられている(7)

微粒子 (PM2.5)除去

PM2.5は、大気中に浮遊する直径2.5マイクロメートル以下の微小な粒子です。PM2.5は、呼吸器系に沈着し、肺がんや心臓病などの深刻な健康問題を引き起こすことが知られています。

効果的な観葉植物:

  • シダアレカゲ (スパーダープラント)
  • ポトス (エバーフレッシュ)
  • サンセベリア (サンスベリア)

メカニズム:

観葉植物の葉は、PM2.5を静電気的に引き寄せ、葉の表面に付着させます。その後、PM2.5は雨水によって洗い流されるか、時間をかけて分解されます。

研究:

観葉植物の存在は、室内環境におけるPM2.5の低レベルと関連しており、呼吸器系の健康増進に寄与する可能性がある(2,8)

抗菌作用

シダアレカゲ (Chlorophytum comosum) は、抗菌作用を持つことが知られています。シダアレカゲは、空気中の細菌やカビを捕らえ、葉の表面で分解します。

メカニズム:

シダアレカゲの葉には、ペルオキサイドと呼ばれる抗菌物質が含まれています。ペルオキサイドは、細菌やカビの細胞膜を破壊し、死滅させます。

研究:

Chlorophytum comosum(クモ科の植物)には抗菌作用があり、より健康的な室内空気環境に貢献できる(4)

心血管系の健康

観葉植物は、屋内空気の質を改善し、心血管系の健康状態の改善と関連していることが報告されています。

メカニズム:

観葉植物は、CO2を吸収し、酸素を放出することで、室内の空気質を向上させます。また、観葉植物は、ストレスを軽減し、リラックス効果をもたらすことが知られています。

研究:

観葉植物は、室内の空気の質を改善し、特に高齢者の血圧や心拍数の低下など、心血管系の健康状態の改善につながる(8)

汚染物質のバイオサンプリング

観葉植物は、有機リン系難燃剤 (OPFRs) など屋内汚染物質のバイオサンプラーとして機能することができ、低コストで屋内空気の質をモニターする方法になりえます。

メカニズム:

観葉植物は、葉や根を通してOPFRsなどの汚染物質を吸収します。これらの汚染物質は、植物組織内で分析することができます。

研究:

観葉植物は、有機リン系難燃剤(OPFR)のような室内汚染物質のバイオサンプラーとして機能し、低コストで室内空気の質をモニターすることができる(9)

まとめ

観葉植物は、オゾン、CO2、ホルムアルデヒド、VOCs、PM2.5などの除去をはじめ、相対湿度の向上や抗菌作用など、様々な空気清浄機能を備えていることが実証されています。これらのメリットは、呼吸器系や心血管系の健康改善につながる可能性があります。効果は植物の種類や環境条件によって異なりますが、観葉植物は低コストで屋内空気の質を向上させる有望な手法と言えます。

今後の展望

観葉植物の空気清浄機能に関する研究は、現在も活発に続けられています。今後は、より効果的な観葉植物の組み合わせや、観葉植物の空気清浄機能を最大限に活かすための室内環境の整備方法などについて、更なる研究が進められることが期待されます。

参考文献

1. Papinchak HL, Holcomb EJ, Best TO, Decoteau DR. Effectiveness of houseplants in reducing the indoor air pollutant ozone. Horttechnology. 2009 Jan;19(2):286–90.

2. Chang L-T, Hong G-B, Weng S-P, Chuang H-C, Chang T-Y, Liu C-W, et al. Indoor ozone levels, houseplants and peak expiratory flow rates among healthy adults in Taipei, Taiwan. Environ Int. 2019 Jan;122:231–6.

3. Gubb C, Blanusa T, Griffiths A, Pfrang C. Can houseplants improve indoor air quality by removing CO2 and increasing relative humidity? Air Qual Atmos Health. 2018 Dec;11(10):1191–201.

4. Chuenko NF, Novikova II, Tsybulya NV, Novikov EA, Savchenko OA. Environmental aspects of improving the indoor air environment using Chlorophytum comosum (on the example of preschool educational institutions). Samara Journal of Science. 2023 Jun 29;12(1):130–4.

5. Wolverton BC, Mcdonald RC, Watkins EA. Foliage plants for removing indoor air pollutants from energy-efficient homes. Econ Bot. 1984 Apr;38(2):224–8.

6. Lim Y-W, Kim H-H, Yang J-Y, Kim K-J, Lee J-Y, Shin D-C. Improvement of Indoor Air Quality by Houseplants in New-built Apartment Buildings. J Japan Soc Hort Sci. 2009;78(4):456–62.

7. Pegas PN, Alves CA, Nunes T, Bate-Epey EF, Evtyugina M, Pio CA. Could houseplants improve indoor air quality in schools? J Toxicol Environ Health Part A. 2012;75(22–23):1371–80.

8. Chen R-Y, Ho K-F, Hong G-B, Chuang K-J. Houseplant, indoor air pollution, and cardiovascular effects among elderly subjects in Taipei, Taiwan. Sci Total Environ. 2020 Feb 25;705:135770.9. Wang Y, Zhang Z, Tan F, Rodgers TFM, Hou M, Yang Y, et al. Ornamental houseplants as potential biosamplers for indoor pollution of organophosphorus flame retardants. Sci Total Environ. 2021 May 1;767:144433.

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