日本のバブル崩壊から約30年後、今度は中国が不動産価格と物価の下落による「ダブル・デフレ」のリスクに直面しています。この状況は、日本が経験したデフレの長期化と似ており、経済成長が鈍化する「日本化」の懸念が高まっています。この記事では、日本のバブル崩壊とその後の低迷期が中国経済の行方にどのような教訓を与えるのかについて考察します。
日本のバブル崩壊とその影響
日本は戦後の高度成長期を経て、オイルショックや人口増加率の低下によって、経済の基盤が弱体化していきました。1980年代後半、金融緩和で資産価格が急騰し、一時的に経済は好調に見えましたが、資産価格と実体経済の乖離は、やがて大きな資産バブル崩壊を引き起こしました。この崩壊後、不良債権や過剰債務問題が企業や家庭に重くのしかかり、経済は長期的な低迷に陥りました。
さらに、雇用や設備投資が縮小し、消費が冷え込んだことにより、物価の下落が始まり、デフレの長期化が進んでしまいました。企業はコスト削減のため賃金を抑制し、物価も回復しない悪循環に陥ったのです。
中国経済の現状:潜在成長率の急落と米中関係
かつて「世界の工場」として高成長を維持してきた中国も、人口減少や余剰労働力の枯渇に伴い、成長率が鈍化しています。特に2010年代以降、米中貿易摩擦の影響で輸出が鈍り、成長率の下落が顕著です。さらに、ゼロコロナ政策解除後も経済は完全には回復せず、中国の潜在成長率は低下し続けています。
米中貿易摩擦も日本の経験と共通しており、トランプ政権時代に始まった関税引き上げや輸出規制は、中国経済に逆風をもたらしました。また、中国政府が民間企業への統制を強めたことも、経済活動を制約する要因となっています。
不動産価格下落を容認する政策の影響
日本と中国には、不動産価格の下落を容認する点でも共通点があります。日本では、不動産価格が高騰し「マイホームを持つ夢」が遠のいたため、価格下落が歓迎されましたが、結果として銀行融資規制や金融引き締めが進み、経済に打撃を与えました。中国でも「共同富裕」の理念の下、住宅価格の高騰を抑えるため、不動産業界への借り入れ規制が導入され、現在の不動産価格下落につながっています。しかし、価格下落が進むことで、逆資産効果により消費が抑制され、過剰債務問題も懸念されています。
日本と同様に「中国固有の問題」となるのか
日本のバブル崩壊は当時の世界経済にはさほど影響を与えず、「日本固有の問題」とされました。同様に、中国経済も中央政府が大きく関与するため、急激な経済危機には発展しないと考えられます。中小銀行の経営問題が表面化しても、世界の金融システムに大きな波及は少ないでしょう。しかし、日本がバブル崩壊後も世界経済が堅調だったのに対し、現在の米国も不動産価格下落に見舞われており、今後の米中経済低迷が世界全体に与える影響は無視できません。
今後の見通し:世界経済への影響は?
日本のように、中国も「慢性病」としての低迷期に入る可能性があり、急激な経済危機こそ避けられるものの、長期にわたる成長率の低下は避けられないかもしれません。特に、米国と中国の2大経済が停滞すれば、世界経済の安定性は大きく損なわれるでしょう。
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