忙しい現代社会において、心身ともにリラックスできる時間を持つことはとても大切です。そんな時、自然の音色に耳を傾けてみるのはいかがでしょうか?実は、近年、自然音が人に与えるリラックス効果についての研究が盛んに行われているのです。
研究では、一般の人々だけでなく、特定の健康状態にある方々を対象に、さまざまな手法を用いて自然音の効果が検証されています。その結果、自然音には以下のようなリラックス効果をもたらすことがわかってきました。
1. 自律神経系と中枢神経系に作用し、音楽との相乗効果でさらにリラックス
ヒトの体は、交感神経と副交感神経の2つの神経系によって調節されています。交感神経は心身を活性化させ、副交感神経はリラックス状態へと導きます。自然音を聴くと、副交感神経が優位になり、心拍数や血圧が低下し、筋肉の緊張が緩和されます。さらに、音楽と自然音を組み合わせることで、このリラックス効果がより高まることがわかっています。(1)
2. 都市音に比べて、森林の音が前頭前皮質の活動を抑制し、心拍数を低下させ、快適感やリラックス度を向上
脳の前頭前皮質は、思考や感情に関与する重要な領域です。都市音は、この前頭前皮質の活動を活性化させ、ストレスや不安を引き起こす可能性があります。一方、森林の sounds は前頭前皮質の活動を抑制し、心拍数を低下させ、快適感やリラックス度を向上させることがわかっています。(2)
3. 心臓手術後の患者さんに対して、音楽療法と自然音の組み合わせが、痛みや不安を軽減し、リラックスをもたらした
心臓手術後の患者さんは、痛みや不安を感じやすい状態にあります。音楽療法と自然音の組み合わせをこの様な患者さんに試したところ、痛みや不安が軽減し、リラックス効果が得られることがわかりました。(3)
4. 看護学生の不安レベルを下げ、バイタルサインを改善するのに、漸進的筋弛緩法と自然音の組み合わせが効果的
看護学生は、試験や実習などによるストレスを抱えやすいと言われています。漸進的筋弛緩法とは、筋肉を意識的に緊張させてから緩めることで、心身をリラックスさせる方法です。この方法と自然音を組み合わせたところ、看護学生の不安レベルが低下し、バイタルサインが改善することがわかりました。(4)
5. 重篤な患者さんの不安を軽減するのに、自然音を使った音楽療法が有効
重篤な患者さんは、病状や治療への不安を抱えやすい状態にあります。自然音を使った音楽療法をこの様な患者さんに試したところ、不安が軽減され、リラックス効果が得られることがわかりました。(5)
6. 脳波分析で証明された、自然音と音楽の相乗効果
脳波分析を用いた研究では、ピアノなどの楽器の音色と自然音を組み合わせた音楽を聴いた時の脳波が、単体の自然音を聴いた時の脳波よりもリラックス状態を示していることがわかっています。これは、自然音と音楽が脳に異なる働きかけをし、相乗効果でリラックス効果を高めていることを示唆しています。(6)
7. ギャンブル依存症の方々にも効果がある
ギャンブル依存症の方々は、ストレスや不安を感じやすく、衝動的な行動を起こしやすいと言われています。研究によると、自然音がギャンブル依存症の方々の生理的なリラックスとポジティブな心理反応をもたらすことがわかっています。これは、自然音が心身の緊張を緩和し、衝動的な行動を抑制する効果があることを示唆しています。(7)
8. 主観的なリラックス体験と関連する音響コンテンツ
異なる種類の音響コンテンツ、例えば自然音を含む音楽などは、主観的なリラックス体験と関連していることが報告されています。特に、自然音が混ざった器楽演奏が効果的であることがわかっています。(8)
9. 自然環境と静寂を組み合わせた音楽療法
学生を対象とした研究では、「深度リラクセーション音楽療法 (DRMT)」と静寂を組み合わせた手法が、自然環境の中で行うことで、リラックス効果を高めることがわかっています。(9)
このように、これまでの研究成果を総合すると、自然音は単独でも、音楽と組み合わせてでも、リラックスにポジティブな影響を与えることが明らかです。この効果は、さまざまな集団や状況で観察されており、自然音がリラックスを促し、ひいてはメンタルヘルスやウェルビーイングの向上に役立つ可能性を示唆しています。
自然音を取り入れてリラックスする方法
研究結果で示されたように、自然音は心身のリラックスに効果的なことがわかっています。では、実際にどのように自然音を取り入れればよいのでしょうか?以下に、いくつかの方法をご紹介します。
1. 自然の中で過ごす
時間があれば、公園や森林など、自然の中で過ごすのが最も効果的です。鳥のさえずりや風の音、波の音など、自然の音を全身で感じることで、心身のリラックス効果を得ることができます。
2. 自然音のCDやアプリを活用する
時間がない場合は、自然音のCDやアプリを活用するのも良い方法です。さまざまな種類の自然音が収録されているので、自分の好みに合わせて選ぶことができます。
3. 自然音をBGMとして生活に取り入れる
自宅や職場などで、自然音をBGMとして流してみるのも良いでしょう。集中力を高めたり、ストレスを軽減したりする効果が期待できます。
4. 自然音を取り入れた音楽を聴く
自然音と音楽を組み合わせた音楽を聴くのも良い方法です。リラックス効果だけでなく、心を落ち着かせたり、安らぎを与えたりする効果も期待できます。
5. 自然音を使った瞑想やヨガを行う
瞑想やヨガを行う際に、自然音を組み合わせるのも効果的です。心身をより深くリラックスさせることができます。
注意点
- 自然音を聴く際は、音量に注意しましょう。大きすぎる音量で聴くと、かえって逆効果になる可能性があります。
- 自然音の聴きすぎは避けましょう。長時間聴き続けると、集中力が低下したり、眠くなったりする可能性があります。
- 自分の体調や気分に合わせて、自然音の種類や聴く時間を調整しましょう。
まとめ
自然音は、心身のリラックスに効果的なツールです。上記の方法を参考に、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。
さらにリラックス効果を高めるポイント
- アロマテラピーと組み合わせる
アロマテラピーと自然音を組み合わせることで、よりリラックス効果を高めることができます。ラベンダーやカモミールなどの香りには、リラックス効果があることが知られています。
- 照明を暗くする
照明を暗くすることで、副交感神経が優位になり、リラックス効果を高めることができます。
- 目を閉じる
目を閉じることで、外界からの情報を遮断し、より自然音に集中することができます。
- ゆったりとした服装で過ごす
ゆったりとした服装で過ごすことで、体がリラックスしやすくなります。
自然音を取り入れて、心身ともにリフレッシュしましょう!
参考文献
8. Yu B, Hu J, Funk M, Feijs L. A study on user acceptance of different auditory content for relaxation. Proceedings of the Audio Mostly 2016 on – AM ’16. New York, New York, USA: ACM Press; 2016. p. 69–76.9. Pfeifer E, Fiedler H, Wittmann M. Enhanced relaxation in students after combined Depth Relaxation Music Therapy and silence in a natural setting. The Arts in Psychotherapy. 2019 Mar;
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