筋トレと筋肉痛の関係は奥が深く、複雑な話題です。筋肉痛は運動を妨げる要因の一つになりますが、運動が痛みへの感受性やパフォーマンス、回復にどう影響するのか、様々な研究が進められています。この記事では、筋肉痛の時に筋トレを行うのは逆効果なのか、まとめていきます。
運動は痛みの感受性を下げる
運動トレーニングは、慢性的な痛みのある方の場合、痛み閾値を上げ、痛みの感受性を下げる効果が期待できます。痛みについての教育やマッサージなどの運動以外の介入よりも効果的だという研究結果も報告されています (1)。
高強度インターバルトレーニング (HIIT) は、感覚ニューロンにある酸センサーイオンチャネル (ASICs) を抑制することで、運動直後の筋肉痛 (DOMS) を軽減させることがわかっています (2)。
神経筋疲労への影響
筋肉痛は、中枢由来の神経筋疲労を悪化させることで運動パフォーマンスを低下させる可能性があります。これは、傷害受容体からの抑制フィードバックにより、中枢神経系からの運動出力が低下するためです (3)。
筋力トレーニングと慢性疼痛
筋力トレーニングは、慢性的な上肢の痛みを抱える方の筋疲労耐性や自己評価される健康状態を改善し、痛みを軽減させる効果が認められています (4)。
高強度の筋力トレーニングは、痛みのある筋肉のリハビリテーションにも有効で、筋活動性と筋力を向上させることで、反復動作時の相対的な筋負荷を減らすことができます (5)。
運動後遅発性筋痛 (DOMS) について
DOMS は、慣れない運動後に起こる痛みやこわばりのことで、一時的に筋パフォーマンスを低下させますが、恒久的な障害を引き起こすわけではありません。DOMSを引き起こすような特定の動作のトレーニングを続けることで、時間の経過とともに筋肉痛の反応を軽減させることができます (6).
実験的疼痛と筋力トレーニング
筋力トレーニング中に誘発された急性の筋肉痛は、最大動的筋力を向上させる能力を著しく妨げないことがわかっていますが、等尺性筋力にはわずかに影響を及ぼす可能性があります (7).
まとめ
筋肉痛がある時でも筋トレを行うことは、痛みの感受性や筋力、そして全体的な健康に良い影響を与える可能性があります。筋肉痛は神経筋疲労により一時的にパフォーマンスを低下させるかもしれませんが、定期的なトレーニングは痛みを軽減し、機能を向上させるための適応をもたらします。したがって、筋肉痛を感じているからといって筋トレが必ずしも悪いわけではなく、むしろ痛みをコントロールし軽減していくための効果的な手段となりうるのです。
参考文献
6. Armstrong RB. Mechanisms of exercise-induced delayed onset muscular soreness: a brief review. Med Sci Sports Exerc. 1984 Dec;16(6):529–38.7. Silva V de P, Tricoli V, Ervilha UF. Effects of experimental pain on elbow flexor muscles performance after eight weeks of strength training: a pilot study. RPF. 2023 Oct 9;13:e5339.
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