睡眠の質を向上させる方法として、近年注目を集めているのがアロマテラピーです。本記事では、アロマテラピーが睡眠に与える影響について、様々な研究結果を元に解説していきます。
研究の示すアロマテラピーの効果とは?
数多くの研究論文 [1, 2, 3] によると、アロマテラピーは睡眠の質を改善する上で大きな効果があることが示唆されています。ただし、研究方法の質や対象者の違いなどにより、ばらつきが見られることも事実です。
研究 [2] では、吸入によるアロマテラピーはマッサージよりも睡眠の質向上に効果的であることが報告されています。また、健康な方だけでなく睡眠に何らかの問題を抱えている方にも有効であることがわかっています [2]。
アロマテラピーは睡眠の質だけではなく、ストレス、痛み、不安、うつ病、疲労といった症状の緩和にも効果があることが複数の研究 [3] で明らかにされています。特に、介入期間が長く、1セッションあたりの時間の設定が20分を超える場合に顕著な効果が認められています [3]。
ラベンダーのアロマは、夜間の血圧を下げる可能性があり、また睡眠の質の向上が感じられるという報告もあります [4]。ただし、この研究結果はまだ統計学的に有意な差として認められていないものもあります。
ラベンダーをはじめとする精油の香りは、睡眠中の徐波睡眠(スローウェーブスリープ)を促進することが示唆されています [5]。徐波睡眠は深い睡眠の段階とされており、睡眠の質の向上や睡眠中断の減少に関係していると考えられています。
集中治療室の患者さんに行った研究 [6] でも、アロマテラピーはストレスを軽減し、睡眠の質を改善することが明らかになっています。実験処置後には、ストレスと睡眠の質の指標において有意な差が認められました。
夜勤の看護師さんを対象とした研究 [7] では、芳香剤の吸入が睡眠パターンや質に긍定的影響を与え、疲労感の軽減にも効果がありました。ただし、睡眠潜時(寝付くまでの時間)や総睡眠時間など全ての睡眠パラメーターにおいて有意差が認められたわけではありません。
健康な日本人学生を対象とした研究 [8] では、夜間にラベンダーの香りに暴露されると、起床時の眠気を感じにくくなることが示唆されており、睡眠の質向上につながる可能性が指摘されています。
交代勤務の看護師さんを対象とした研究 [9] でも、アロマ精油の吸入による睡眠の質の向上が認められています。主観的な睡眠の質と覚醒回数に有意な差が見られました。
マッサージを取り入れたアロマテラピーは、吸入と比較して睡眠の質改善にさらに効果的である可能性が示唆されており [10]、介入期間が長ければ効果が高まる傾向にあることも報告されています [10]。
まとめ
これまでの研究結果を総合すると、吸入やマッサージを中心としたアロマテラピーは、睡眠の質を効果的に向上させる可能性があることが示唆されます。特にラベンダーの香りは、睡眠の質に関する客観的・主観的評価において改善効果が認められており、広く研究されています。また、睡眠以外の症状に対しても、ストレスや疲労の軽減といった効果が期待できます。
ただし、研究のデザインや対象者の違いなどにより、ばらつきが見られることも事実です。したがって、今回の結論を鵜呑みにするのではなく、より厳密な検証を重ねたさらなる研究結果が待たれます。
引用文献
9. Kim W, Hur MH. [Inhalation Effects of Aroma Essential Oil on Quality of Sleep for Shift Nurses after Night Work]. J Korean Acad Nurs. 2016 Dec;46(6):769–79.10. Kim ME, Jun JH, Hur MH. [Effects of Aromatherapy on Sleep Quality: A Systematic Review and Meta-Analysis]. J Korean Acad Nurs. 2019 Dec;49(6):655–76.
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