BCAAサプリメント: トレーニング効果を最大化するための科学的根拠

健康

熱心なアスリートや筋トレ愛好家なら、BCAAサプリメントについて一度は耳にしたことがあるでしょう。BCAAとは、分岐鎖アミノ酸 (Branched-Chain Amino Acids) の略で、ロイシン、バリン、イソロイシンの3種類のアミノ酸を指します。必須アミノ酸の一種であり、体内で合成できないため、食事やサプリメントから摂取する必要があります。

BCAAは特に筋肉において重要な役割を果たしており、近年ではトレーニング効果を高めるサプリメントとして注目を集めています。本記事では、BCAAサプリメントが筋トレに与える効果について、科学的なエビデンスをもとに解説していきます。

筋損傷と筋肉痛の軽減

BCAAサプリメントの代表的な効果の一つが、筋損傷や筋肉痛の軽減です。特に、レジスタンストレーニングを行う男性において顕著な効果が認められています (1-5)。研究では、運動後にBCAAを摂取したグループでは、クレアチンキナーゼ (CK) や乳酸デヒドロゲナーゼ (LDH) など、筋肉損傷の度合いを示すマーカーの数値が低下したことが報告されています (1-5)。 これらのマーカー値の低下は、実際に筋肉の損傷が抑えられていることを示唆しています。

また、BCAA摂取は遅延性筋肉痛 (DOMS) の軽減にも効果があることがわかっています (1, 2, 4)。DOMSとは、運動後数時間から2, 3日後に起こる筋肉の痛みのことで、トレーニングの成果の表れともされますが、あまりに強い痛みはトレーニングの継続を妨げることもあります。BCAAを運動の前後に摂取することで、このDOMSの軽減が期待できます。

筋回復の促進

BCAAは筋タンパク質合成を刺激し、筋肉の分解を抑えることで、回復を促進する作用も持っています (6-8)。筋タンパク質合成が活発になると、筋繊維の修復や増大が促され、トレーニングの効果が向上します。研究では、レジスタンストレーニング後にBCAAを摂取した群では、タンパク質合成の指標である p70S6k のリン酸化が増加したことが observed (観察された) (8)。

サプリメントの摂取タイミングとしては、運動の前後が効果的とされています。特に、運動前の摂取の方がDOMSや筋損傷の軽減においてより顕著な効果が得られるという報告もあります (2, 6)。

筋グリコーゲンの節約と疲労軽減

BCAAサプリメントは、長時間運動における筋グリコーゲンの節約にも役立つ可能性が示唆されています (9, 10)。筋グリコーゲンは筋肉内に蓄えられているエネルギー源で、これが枯渇すると疲労感を感じやすくなります。BCAAを摂取することで、グリコーゲンの消費を抑え、持久力向上や疲労感の軽減が期待できます (9, 10)。

また、BCAA摂取による血中セロトニンのレベル低下は、中枢性疲労の軽減を示唆しています (10)。中枢性疲労とは、脳内の疲労物質の影響で起こる疲労のことで、BCAAを摂取することで、運動を持続できる時間が長くなる可能性があります。

まとめ

BCAAサプリメントは、筋損傷や筋肉痛の軽減、筋回復の促進、タンパク質合成の刺激など、筋トレを行う上で様々なメリットをもたらすことが科学的に裏付けられています。特に、運動の前後に摂取することで効果が得られやすいようです。

もちろん、BCAAサプリメントは万能薬ではありません。トレーニングの効果を最大化するためには、適切な食事や休養、フォームの改善など、総合的なアプローチが必要です。しかし、BCAAサプリメントをうまく活用することで、トレーニングの質を高め、さらなる筋力アップやパフォーマンスアップを目指すことができます。

参考文献

1. Howatson G, Hoad M, Goodall S, Tallent J, Bell PG, French DN. Exercise-induced muscle damage is reduced in resistance-trained males by branched chain amino acids: a randomized, double-blind, placebo controlled study. J Int Soc Sports Nutr. 2012 Jul 12;9:20.

2. Ra S-G, Miyazaki T, Kojima R, Komine S, Ishikura K, Kawanaka K, et al. Effect of BCAA supplement timing on exercise-induced muscle soreness and damage: a pilot placebo-controlled double-blind study. J Sports Med Phys Fitness. 2018 Nov;58(11):1582–91.

3. Khemtong C, Kuo C-H, Chen C-Y, Jaime SJ, Condello G. Does Branched-Chain Amino Acids (BCAAs) Supplementation Attenuate Muscle Damage Markers and Soreness after Resistance Exercise in Trained Males? A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Nutrients. 2021 May 31;13(6).

4. Weber MG, Dias SS, de Angelis TR, Fernandes EV, Bernardes AG, Milanez VF, et al. The use of BCAA to decrease delayed-onset muscle soreness after a single bout of exercise: a systematic review and meta-analysis. Amino Acids. 2021 Nov;53(11):1663–78.

5. Branched-chain amino acid supplementation attenuates muscle soreness, muscle damage and inflammation during an intensive training program – The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness 2009 December;49(4):424-31 – Minerva Medica – Journals [Internet]. [cited 2024 May 17]. Available from: https://www.minervamedica.it/en/journals/sports-med-physical-fitness/article.php?cod=R40Y2009N04A0424&acquista=1

6. Shimomura Y, Murakami T, Nakai N, Nagasaki M, Harris RA. Exercise promotes BCAA catabolism: effects of BCAA supplementation on skeletal muscle during exercise. J Nutr. 2004;134(6 Suppl):1583S-1587S.

7. Blomstrand E, Saltin B. BCAA intake affects protein metabolism in muscle after but not during exercise in humans. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2001 Aug;281(2):E365-74.

8. Karlsson HKR, Nilsson P-A, Nilsson J, Chibalin AV, Zierath JR, Blomstrand E. Branched-chain amino acids increase p70S6k phosphorylation in human skeletal muscle after resistance exercise. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2004 Jul;287(1):E1-7.

9. Blomstrand E, Ek S, Newsholme EA. Influence of ingesting a solution of branched-chain amino acids on plasma and muscle concentrations of amino acids during prolonged submaximal exercise. Nutrition. 1996 Jul;12(7–8):485–90.10. AbuMoh’d MF, Matalqah L, Al-Abdulla Z. Effects of Oral Branched-Chain Amino Acids (BCAAs) Intake on Muscular and Central Fatigue During an Incremental Exercise. J Hum Kinet. 2020 Mar 31;72:69–78.

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